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「歩行者保護と歩行者妨害」

自動車に比べて歩行者が交通弱者であることは、みなさんご存知の通り。
でも、車に乗っている時にそれを意識しているか、していないかで歩行者への接し方が大きく変わってきます。
もし運転しているドライバー自身が気が付いていなければ、その被害はより深刻で
セクハラドメスティック・バイオレンス(家庭内暴力)ネグレクト(育児放棄)などと同じように
加害者と被害者の間で意識のズレが相当あるはずです。

 
けたたましくクラクションを鳴らしながら歩行者の中に割り込んでくる車は最悪です。
歩行者を目障りな障害物くらいにしか思っていないのでしょうか。

繁華街など歩行者の多いところに車で来ること自体が間違いです。
どうしても通らざる得ない状況なら謙虚に行動しましょう。

狭い道で歩行者の脇を通過する時、歩行者との間隔も空けず、まったく減速せずに車が通り過ぎると
車を運転しているドライバーは、ぶつからなければ平気と考え勝ちですが、
歩行者は、すれ違いざま「轢かれるのではないか」と恐怖を感じます。

歩行者の脇を通過する時は、歩行者との間隔を1メートル以上とるか、間隔をとれない場合は徐行しましょう。
車が徐行して通過することで、車が歩行者を意識して運転していることが歩行者に伝わります。

夜間、歩行者の顔にハイビームを向けても平気な人がいますが
対向車が眩しい光ならば、歩行者だって眩しいハズです。
狭い道なのにハイビームにしなければ前が見えないのなら、それはスピードの出し過ぎでしょう。

ハイビームで歩行者を発見したら、ライトをロービームに切り替えて速度を落としましょう。
他にも、坂になっている踏み切りではロービームでも角度がついてしまうので電車が通過するまではヘッドライトを消すと親切ですね。

「他の車の邪魔にならないように」と理由を挙げ、歩道に車を乗り上げてしまう人がいますが
これは歩行者に対して「車道を歩け」と宣言しているのと同じで、非常に身勝手な行為です。
特に見通しの悪いカーブで歩道に乗り上げてしまう人は
自らの車を安全な場所に置き、歩行者を危険に晒してしまうという意味で、悪質極まりないと言えます。

交通量の多い道や、見通しの悪い道に路上駐車すること自体が間違いなので、少し遠くても安全な場所に止めましょう。
交通量が少なければ、車道に止めても他の車の邪魔ではないですよね。

歩道を歩いていたり、横断歩道を渡ろうとしている歩行者がいるのに
止まるどころか強引に通り過ぎていこうとする車は歩行者にとっては非常に危険な存在です。
きっと、同じ事を他の車両に対して行えば、確実にクラクションを鳴らされるはずですが、歩行者の声は届きません!

車にとって、今がチャンスだと感じても、歩行者がいるのであれば、チャンスではなくリスクです。

信号のない横断歩道では、車側から見ると歩行者は車が途切れるまで待ってくれているように見えるかもしれません。
でもよく考えると、実は歩行者が道を譲っているわけではなく、車が来るから渡れずに立ち尽くしているだけだったりします。
当然、無理に渡れば止まらない車に轢かれてしまうので、そんなことをする歩行者はいませんよね?
歩行者は車が止まるまで渡ることができないのです。だから車が止まらなければ、車がいなくなるまで待つしかないのです。
この状態は、車という凶器で歩行者を威嚇して、渡らせないのと同じことでしょう。

お約束の場所、すなわち「横断歩道」で待っている歩行者を見かけたら、歩行者の自由に横断歩道を渡る権利を尊重してあげてください。
横断歩道を通過する車にとっては一瞬の出来事ですが、何分も渡れずに待っている歩行者にとっては永遠にも感じられるでしょう。

念のため付け加えると「信号のない横断歩道」は法律的に歩行者用信号が青と同じ意味なので常に歩行者最優先ですから
万一、事故になれば100%車側の過失という非常に重い責任を負うことになります。

他の路上駐車の車がいなくて駐車しやすいという理由で、横断歩道付近に駐車してしまい
後続車から横断歩道を渡ろうとする歩行者の発見を妨害していることがあります。
横断歩道を無視して駐車してしまう人は、横断歩道を渡ろうとする歩行者を無視する傾向にあるようです。

横断歩道は歩行者が渡る場所の目印なので、渋滞などで一時停止する場合も含めて横断歩道の前後は空けておき
対向車やすり抜けしてくるバイクなどの目隠しにならないようにしましょう。

対向車が来た訳でもなく、稀にしか来ない対向車のために路側帯の内側に寄せてしまい
後続車も、なんとなく出来上がった雰囲気の中、前の車の後に続いてしまった結果
路側帯を歩きたい歩行者の思惑とは裏腹に、仕方なく反対側を歩くしかなくなくなります。(右の写真の人)
歩行者に対して無理な幅寄せをしておいて
「道が狭いんだから、歩行者は我慢しろ」という発想は、単なるドライバーの「都合の押し付け」でしかありません。

こんな道では、少し余分に車間距離をあけて止まっていれば、対向車が来た時にどうにでもできますよね。


「対策」

世の中、他人の迷惑をかえりみず無茶なことをしてしまう人がいるので
苦肉の策が色々と考えられていたりします。

ガードレールや杭、植え込みや縁石を設けて歩道を確保することで
物理的にも、心理的にも歩道と車道を分離することができます。

ちなみに、工事などで歩道を占有してしまう場合は、警備員の誘導があるので歩行者は安全に車道を歩くことができます。

特に幼児や高齢者が多いコミュニティ道路では、横断歩道手前で減速・一時停止させるように
横断歩道手前にバンプ(道路の起伏)を設けていたりします。

ステッカーによる注意喚起で、他の車に対しても横断歩道での歩行者保護を呼びかけていたりします。

 
結局のところ「運転の上手、下手」は歩行者をどれだけ意識しているか、の一言に尽きます。
アナタの心掛け次第で歩行者の安全を確保することができるでしょう。

もし「皆もやっているから」や「仕方ない」という言葉で片付けて思考停止してしまうと、アナタも歩行者虐待に加担することになります。
歩行者は、車のドライバーと違い免許を持っていません。(もろちん免許を持っている歩行者もいますが、少なくとも外見では区別できません)
「車社会の都合」を一方的に歩行者に押し付けるのは「悪徳お代官様が、貧しい百姓から厳しく年貢を取り立てる」のと同じことで
強者の論理で物事を進めているだけに過ぎず、道徳的にも倫理的にも許されることではありません。

実は、歩行者を尊重できるというのは、他人に対しての思いやり
すなわち、その人自身の「生き方」そのものだと思います。

 

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2000-2009 文:りあ